とよはし公共建築 学生チャレンジコンペティション
テーマ
『地域の風土とともに育つ保育園』
課題主旨
遠州灘と三河湾に抱かれた渥美半島の根に位置する豊橋市は極めて恵まれた風土に包まれている。西南に海に包まれた豊橋平地は、地球温暖化の波の中にあって 35 度に達することはほぼ無い。奥三河の山地を源流とする豊川は、新鮮な水系を平地へともたらし、豊かな恵みを湛えて来た。この地に東三河の気候と共に子どもが育つ園を作ってもらいたい。SDGS とは無理を押して実現する課題で無い。太陽光パネルや屋上緑化は有効な手段であるが、それだけですべで解決することはできない。屋上緑化よりはるかに大量の緑が三河山には茂っている。太陽光パネルだけで稼働できる空調機は一部である。電球を LED に変えることは必要な時代の変化である。しかし電球は地球温暖化が進行するより遥か前から存在する。LED 化はもはや当然の行為であり、新たにアピールするメッセージではない。問題は現代人の生活習慣そのものにある。人間は環境なしには生きられない。人間は気候風土の一部である。夕涼みとは地面に含まれた水分が蒸気となり、冷やされた大気が自然の海風に乗って送り届けられる仕組みである。陽だまりとは温かい太陽の恵みが寄り集まった位置を言う。その意味するところは冷えた大気の中にあって、巧みに人は暖かさを見出す文化があったということである。「軒を貸して母屋を盗られる」という諺がある。この諺には、かつての日本には軒を貸す暖かさがあったという含みがある。沖縄では軒下の空間をアマハジという。雨を凌ぎ海風を導く軒下は、自然に人の心をも暖めて、慈愛の心を他人にも配っていた。暖かさとは科学に裏打ちされたブラウン運動の強さの指標だけでは無い。暖かさとは状況に左右される主観である。同じ温度でも暑く感じることも寒く感じることもある。人間とは感情に左右される動物である。初詣の境内で当たる篝火は暖かく、その前ですする汁粉は寒さを忘れさせる。機械に頼る現代建築文化が普及するに従い、あたかも快適性とは温度と湿度のバランスであるかのような指標が生まれた。人間はそんな指標では測れない遥かに複雑な動物なのである。近年世界では教育が変わりつつある。Teaching から Learning への流れである。人は多種多様である。教育の現場はその多種多様な子どもを、如何に世の中に役に立つ人材に育て上げるべく苦慮をしてきた。教員も人である。よって対応できる多様性には限界がある。その中で近年 ICT の発達に伴い、幾分かの教員の負担を AI が肩代わりできる可能性が生まれてきた。モンテソーリやフィンランドスタイルの教育の応用も進みつつある。クラス分けをして一方向に指導する集団教育が、次第に過去の物になる可能性が出てきている。未来の教育現場にも対応できる計画をしてもらいたい。
今回は低年齢の子どもを対象とした建物であるので、教育という議題を直接反映させることは難しいかもしれない。しかし確実に教育環境が変化してゆく中で、その前段階の乳児の保育環境も変化を求められている。子どもを守るだけでは理想的保育とは言えない。乳児は自ら動きを選択し自ら学ぶ。子どもの成長の可能性を広げる場を考えてもらいたい。本物の木造を作って欲しい。鉄骨構造に木を貼り付けるような虚飾は願い下げである。木造の美学は隅々まで一つの魂が行き渡っているところにある。主要構造部から手すりや窓枠に至るまで同じ構造の美学が鍵を握るのが木造の倫理である。木は繊維の法線方向に弱い。鉄骨のように溶接することは出来ないから、曲げモーメントを伝えるためにはそれなりの工夫が必要である。かつてはその為に斗栱という知恵があったが、今更過去を模倣したところで答えは出ない。古から人が駆使してきた木という素材を、現代に相応しい知的な手法で解いてもらいたい。金物や集成材や CLT を使っても良い。しかしそれだけで木造の問題が全て解けることはあり得ない。木の心を読み、あるべきところにあるべき材料を駆使して建物を編み上げてもらいたい。実施される建物である。アイデアコンペではない。よって荒唐無稽の造形物は審査を通らない。欲しいのは形で無い。これ見よがしのパッシブソーラーを駆使したショールームでもない。これ見よがしに原木を見せつける民藝風のログハウスも要らない。欲しいのは、あたりまえに気候の変化を愉しみ嗜む知恵に満ち溢れた文化である。100 年後の文化遺産を作って欲しい。本来の人らしい生活とは何か。豊橋の気候に生きるということは何かという問いである。それに素直に答えた時、諸君の子等へと遺す素晴らしき未来像が産まれ出る筈である。  建築家 手塚貴晴+手塚由比
■『とよはし公共建築学生チャレンジコンペティション』とは
コンペで選考された学生に、施設整備の企画・設計段階のプロセスに参加していただく取り組み。
Challenge①コンペティション(建築計画の提案)
 公共施設を題材とした建築計画アイデアを募集する学生コンペティションを開催します。
Challenge②企画(建築計画案の具体化)
 選考された上位 3 者の学生には「建築計画提案者」として、「建築計画検討ワーキング会議」に
 参加していただきます。「アドバイザー」の指導のもと関係者と意見交換しながら、それぞれの
 提案内容を建築計画案として具体化します。
Challenge③設計(基本設計への関与)
 具体化した建築計画案から実現性が高く最も効果的な 1 案を、「建築計画検討ワーキング会議」
 において選定し、施設整備の設計方針に採用します。採用された学生には、別途市が選定する
 設計事務所が行う設計の段階で、業務に参加していただきます。
※challenge②、③の詳細は「建築計画検討ワーキング会議設置要綱」をご確認ください。
■対象建築物
用途:0 歳児から 2 歳児を対象とする公立認可保育所(新吉保育園移転整備事業)
■参加者の資格
令和 4 年 4 月 1 日現在、大学・大学院、短期大学、高等専門学校、専修学校、高校、専門学校に
在籍中の学生。上記の学生により構成されたグループによる応募も可とします。
■審査委員会
審査委員長 手塚 貴晴 (アドバイザー) 建築家・東京都市大学教授
審査委員 手塚 由比 (アドバイザー) 建築家
水谷 晃啓 建築家・豊橋技術科学大学大学院准教授
井中 あけみ 豊橋創造大学短期大学部教授(幼児教育・保育)
小野 全子 愛知建築士会
宮地 淳行 豊橋市建設部次長
■賞及び賞金等
最優秀賞 1 点 賞金 10 万円、賞状、建築計画提案者として委嘱
優秀賞 2 点 賞金 5 万円、賞状、建築計画提案者として委嘱
特別賞 数点 賞金 3 万円、賞状((公社)愛知建築士会豊橋支部協賛)
高校生奨励賞 数点 記念品、賞状(企業協賛)
■日程
募集開始
 令和 4 年 4 月 15 日(金)
応募登録申込受付期間
 令和 4 年 4 月 15 日(金)~6 月 22 日(水)
提出図書受付期間
 令和 4 年 6 月 23 日(木)~6 月 30 日(木) 必着
一次審査結果発表
 令和 4 年 7 月 15 日(金)頃
修正提出図書受付期間
 令和 4 年 8 月 15 日(月)~8 月 19 日(金) 必着
最終審査(二次審査)審査結果発表・表彰式
 令和 4 年 8 月 28 日(日) 13 時~18 時(予定)
建築計画検討ワーキング会議
 令和 4 年 9 月上旬~10 月下旬
■送付先
豊橋市役所 建設部 建築課 学生コンペ係 (必ず明記のこと)
〒440-8501 豊橋市今橋町 1 番地 市役所東館 10 階 (0532)-51-2567
※郵送、宅配、直接持ち込みにより提出してください。電子メールは不可。
※提出に要する費用は提案者の負担となります。
詳細は、主催者のホームページをご確認下さい。

※応募の際は、必ず主催者が発行する応募要項をご確認下さい。